ソローヒルの庭新連載 4

「ソローヒルの庭 12ヶ月52週」
  第4週     2013/3/25から
すみれよ さくらよ そしてイノシシ


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 森に光る萌え木のあわいで、ヤマザクラが天女の衣をひるがえしている。春が爛漫を迎えつつあるのだ。野山に花が満ちているので、近所を歩き回るのが楽しい。踏み跡のない草地では、スミレの花が大きな絨毯に刺繍されている。「山路来て何やらゆかしすみれ草」、と芭蕉の句を口ずさみながらそれを確かめに来たが、未だ健在で喜ばしい。その端から一株だけいただいて、庭に移植したのが、年々増えている。
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ソローヒルの庭新連載 3

★以前執筆した朝日ビジュアルシリーズ「野菜づくり花づくり」
の連載エッセイ「ソローヒルの庭から」を大幅に加筆改稿して1年間52回
週刊連載します。自然を愛する人々、田舎に住みたい方々に読んでいただければ幸いです。

文・鶴田静 / 写真・エドワード・レビンソン 禁転載


     「ソローヒルの庭 12ヶ月52週」
  第3週 春陽 春分     2013/3/18から

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 水色の空に、いくつもの白い花が、群れる鳥のように枝に止まって浮かんでいる。ああ、ついに咲いた! 1年間待ち望んでいたハクモクレンが、花開いたのだ。9枚の純白の花被が重なり合った大きな花が、その数200余りで葉の無い木の満身を飾っている。なんという壮観さだろう。私は毎日、朝な夕な、白い花が太陽で黄金色に、夕焼けで茜色に、月光で銀色に染め変えられるのを見届けなければ気が済まない。

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ソローヒルの庭新連載 2


「自然を愛する人々へ。ソローヒルの庭 12ヶ月52週」

第2週  植物のボランティア 2013/3/11から

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早暁、外がいつもよりざわめいている。数種の鳥の声が混じり合い、競い合い、高々と囀って春を告げ、春眠の民(たみ)の起床を促す。その隙間に聞こえてくるのは耕運機のエンジン音だ。近くの田んぼでは、いよいよ代掻きが始まっている。凍っていた粘土がやわらかく溶かされ、苗を懐(いだ)く日を待つ。

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ソローヒルの庭新連載1


以前執筆した朝日ビジュアルシリーズ「野菜づくり花づくり」
の連載エッセイ「ソローヒルの庭から」を大幅に加筆改稿して1年間52回
週刊連載します。自然を愛する人々、田舎に住みたい方々に読んでいただければ幸いです。
文・鶴田静 / 写真・エドワード・レビンソン 禁転載

     「ソローヒルの庭 12ヶ月52週」
  第1週     啓蟄    2013/3/4から 

 丘に建つ家の東側の谷に沿うのは、菜の花畑、蜜柑山だ。そこに集まる蜂や鳥の羽音が、東風に運ばれて耳に届く。この雄大な里山風景から庭に目を移すと、今年の寒さで咲き遅れた日本水仙やヒヤシンス、クリスマス・ローズがおずおずと花を開いていていとおしい。猫の尻尾のようなネコヤナギの花穂は、薄紫から白へと変わり、白と紅色のジンチョウゲが咲きめて、春の喜びと香りを人の心いっぱいに満たしてくれる。
 

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