★以前執筆した朝日ビジュアルシリーズ「野菜づくり花づくり」
の連載エッセイ「ソローヒルの庭から」を大幅に加筆改稿して1年間52回
週刊連載します。自然を愛する人々、田舎に住みたい方々に読んでいただければ幸いです。

文・鶴田静 / 写真・エドワード・レビンソン 禁転載


     「ソローヒルの庭 12ヶ月52週」
   第8週  2013/4/22から


「アースデー」と燕 そして草毟り

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 朝露に濡れた瑞々しい若葉が、炎のごとく家と庭を包み込んでいる。清らかな水蒸気が漂ってきて、思わず深呼吸。家族全員で陽光の中の庭を廻る。
 小さなツツジの列が次々と咲き継いでいる。ミツバツツジは五分咲きにもかかわらず、華やかさこの上ない。堂々と咲き誇っているのはオオムラサキ。亡母の庭にあった木を、ここに移植したのだ。今ではツツジの中で一番の大株になり、母は私を見守っている。

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 庭に出ると、すぐ細々したことをやりたくなる性分だ。ひとたび始めれば、他のことは全て忘れる。夢中で草毟りをすると、ほんの小さな地面なのに、一輪車に山盛りになっている。砂地に水が染みこんでいくように、砂利の地面が、あっという間に草の原になってしまうからだ。
 当地に移住したばかりの時、私の茫々とした庭を見た近所の農家のおばあさんが、「草はね、短い内に抜かなきゃ駄目よ。花が咲く前にね」と優しく教えてくれたのだが、なかなかその通りには出来ない。花を咲かして楽しんでから、それが種にならないうちに毟ることをやっている。
 そこで一案。叢草を減らすために、小道に防草シートを張り、砂利を敷いた。歩きやすい。ベンチの周りには、モルタルでタイルや小石を敷き詰めた。きれいに保てる。お寺から出た廃材の見事なケヤキの柱をベンチにして、その前に洗い出しのタタキを作ったら、草に邪魔されず、ゆったりと休める場所になった。
 自然との葛藤の中で、知恵や技術をもって解決を図るのが人間のやり方なのだ。だがそれが過ぎて、やたらと自然をもてあそび、破壊することは避けなければならない、と自省。
 毎年4月22日は「アースデー」が世界各地の環境保護に関心のある人々によって開催される。今年も東京では代々木公園で20、21日に著名人も集まって開催さ

れた。
「アースデー」は70年代に1度アメリカで行われ、1990年からこの日を正式な日として世界中に広まった。

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 農村の外れにあるわが家でも何回か行った。古民家とそれに続く広大な野原を開放して。毎回2、300人が地元や都会から参加した。動物たちやピアノやわが家に滞在中のチェルノブイリの子どもたちも野原に集合した。とてもすてきな一日だった。しかし今では、私たちの暮らしは「毎日がアースデー」になっている。

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 そして4日後の4/26日は1986年にチェルノブイリの
原発事故が起きた日だ。その教訓も生かせず、またもや
事故が起きている。おそらく、これからもその可能性が。
92年に訪れたベラルーシの写真がこちらに。

http://edophotobiz.com/chernobyl_2.html

 エンドウマメの紅色や白の蝶形の花が、サヤになっている。ダイコンが白い花で、ブロッコリーとキャベツが淡黄色の花で、春菊が真っ黄色で身を飾っている。まるで野菜であったことを忘れたかのように。

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 2年前までのこと。燕が数羽でデッキを訪れ、小首を傾げながら様子を見ている。いよいよ巣作りをするのだな。夫は喜んで、落下物避けの板を、軒下の昨年の巣の下に取り付けた。燕のになるのも一仕事なのである。そして燕のアパートが出来、数家族が棲みついた。そして巣立つとき、燕たちは私たちの頭上を何回も旋回してお礼と挨拶をして去った。
 けれども去年から、燕の訪れることはなくなった。原因は分からない。人間が「アースデー」を一生懸命にやっているのだが。
 キジバトが草毟りの後の種や虫をあさりにやって来た。
 アヤメとムラサキツユクサの蕾がそれぞれの紫を発色し、ほんの少し先の季節へと誘っている。


                    (来週に続く)


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(写真:エドワード・レビンソン)
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