の連載エッセイ「ソローヒルの庭から」を大幅に加筆改稿して1年間52回
週刊連載します。自然を愛する人々、田舎に住みたい方々に読んでいただければ幸いです。
文・鶴田静 / 写真・エドワード・レビンソン 禁転載
「ソローヒルの庭 12ヶ月52週」
第9週 2013/4/29から
苗植月(なえうえづき)の庭仕事 九条と子どもを守る
五月、うるわしの五月! 真緑が照り映えている。常緑樹の葉から、まるでたった今蜂蜜を塗ったように、光がしたたり落ちているのだ。萌え出た若葉は葉を厚くし、色を濃くして生長を誇っている。季節と共に変容する植物。
その中の白い花はオオデマリとコデマリ。オオの方はゆうに500個の花が付いている。樹冠約3メートルだもの。
ゴールデンウィークだが、「みどりの日」もあり、これほどの緑の中では、「グリーンウィーク」と称するのも良いのではないか。環境を守るという視点からも。何を隠そう、私たちが原野を切り開いて庭にし、林を作り、植樹に励んでいるのは、次世代にたくさんの樹木を残したいからなのだ。
5/3は憲法記念日だが、今、日本の『平和憲法』の存在が脅かされている。
改憲案がまかり通っているのだ。世界に誇るこの憲法九条はどうしても守っていかなければならない。以前、芥川賞作家の米谷ふみ子さんから「大好きな九条」の葉書をいただいた。彼女の著書『ええ加減にしなはれ!アメリカはん』(岩波書店)の書評を書いたので(2紙に)。アメリカで原爆写真展を開く活動など、「世界の九条」固守への彼女の強い思いと行動に敬服。
それから、『憲法九条を世界遺産に』 (集英社新書) 太田 光, 中沢 新一著を読んで、なんてすばらしい発想だろう、実現するといいと思った。富士山が世界文化遺産になるのだから、憲法九条(現行)もそうして欲しい。両者とも、日本の象徴だ。
護憲派やおほでまりのごと参集す 紫ず花
和風にしつらえた花壇に混植しているアヤメ、ムラサキツユクサ、シャクヤクが満開になった。濃淡の紫の襲(かさね)と、鮮烈な赤紫の大輪が、風景を一枚の衣に仕立てている。
祝日の多い週。ひとは休日を楽しむが、植物に休日はない。この地域では、連休は田植えをする。余所に住む家族が帰郷し、一家総出の作業が連日続く。私たちも刺激されて、庭仕事に励む。今週はタマネギを収穫した。サヤエンドウが盛りなので毎日食べる。チェルノブイリの子どもたちが我が家に滞在したとき一緒に収穫したら、そのまま生でむしゃむしゃ。なるほど、甘くておいしい。
四月は卯月と呼ばれるが、それは苗植月(なえうえづき)の転意とも言われる。そこで、先月から移植を続行中。トウオガタマの木をベンチの後ろに移しかえてから3年。今、花が満開で、バナナのような香が溢れている。それで一名をバナナノキと言う。客人の男性に手伝ってもらって植えかえた木なので、花が咲くといつも彼を思い出し、その労をねぎらう。
例年通りにアサガオの種蒔き。ウッドデッキを囲む外壁に這わせて、グリーン・カーテンにしたいのだ。木箱八個分の自家採種の種だが、この晴天続きでうまく発芽した。
子どもの日。今年の子どもの出生率は過去最低だという。それだからこそ、今の子どもたちの健康を願おう。端午の節句には、菖蒲湯に入ると邪気を払うというので、道端の野菜スタンドでショウブの葉を買い、湯船に浮かべる。労働で疲れたからだを癒してくれるだろう。この日、夏が立つ。いよいよ深みの増す緑陰で、森林浴などをしたいものだ。庭や畑仕事の後に、会社勤めの休養に。ビールやワインを飲みながら。
(来週に続く)
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