★以前執筆した朝日ビジュアルシリーズ「野菜づくり花づくり」
の連載エッセイ「ソローヒルの庭から」を大幅に加筆改稿して1年間52回
週刊連載します。自然を愛する人々、田舎に住みたい方々に読んでいただければ幸いです。

文・鶴田静 / 写真・エドワード・レビンソン 禁転載


     「ソローヒルの庭 12ヶ月52週」

ソローヒルの庭で 132013/5/27から

燕の飛翔  花立つタチアオイ

 千紫万紅、いよいよ梅雨の時節の花見時である。数株のアジサイが日に日に色づいてきた。亡母が植えていたアジサイは、他よりも一足早く、白藍(しらあい)から青紫の色鮮やかな笑顔を作っている。ギボウシの長い花茎の先端で花が揺れ、濃淡の紅色のシモツケが粉を吹いて咲き零れる。黄色のヒペリカムも開花した。

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 タチアオイは、雨降りに間に合わせるかのように2メートルほどに伸び、下の方から花立ってきた。濃い紅色、一重のきりりとした花は、昔から日本の地に根付いていて、懐かしさを喚起される。より丈の高い赤紫や白や薄黄色の花は、洋種である。フリルの寄った一重のやわやわしい花びら。これらタチアオイを、私は小道に沿って群生させている。大好きで、自慢の花なのである。
 生家に群れ咲いていたダリアを、あのように見事に咲かせたいと思った。中でもぜひ欲しかったポンポンダリア。ちょうど今頃の満月のような丸みである。が、ああ無残。小粒のカタツムリが花びらのあわいに潜み、食い荒らしているではないか
! 群生ダリアの花壇は、夢だけで終わってしまった。
 それにしても庭は虫の楽園であり、宝庫である。アブラムシやアワフキムシ。カミキリムシやハマキムシ。カメムシやオオスカシバ。どれもこの時期の葉っぱが大好きなのだ。姿形の美しい虫もいるのだが。木酢液や、ニンニクとトウガラシとハーブで防虫液を作り散布しているが、効果のほどは?
 捕っても尽きない虫退治は大仕事だが、虫の害を乗り越えて植物がどんどん生長するのでやりがいがある。まさしく、子の成長を生き甲斐にする親の心境だ。2年前までは、軒下の巣で、燕の子どもたちがチイチイチイと鳴いて餌の催促し、燕の親たちは大忙しで、巣と大地を目まぐるしく往復していた。その飛翔には、子育ての喜びが漲っていた。しかしどうしたものか、今年はまだ訪れてくれない。私たち人間のせいなのだろうか。
 庭からの食べ物と言えば、実を結んだトマト、ナス、キュウリ、ピーマン、シシトウの生育が順調だ。ジャガイモとニンニクは、間もなくの入梅に備えて掘り出さなければならない。どれくらいの数で、そのもっこりした顔が出てくるか、とても楽しみ。 (来週に続く)

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(写真:エドワード・レビンソン)
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