新年のお祝いを申し上げます。祈るのはただ平和のみ。世界の平和、個人の幸福。平和と幸せを破壊するモノを決して許せない、と怒り狂う私です。

 私と夫は東に開いているデッキに立ち、田畑を越えて向こうの丘の、紫色の稜線を縁取る茜色の光の帯を見つめている。と、やがてその帯は上から丸みをつけ、みるみるうちに太陽となってその全貌を現した。新年の日の出もこんなであって欲しい。私はただ息を呑んで太陽を見つめる。コロナと燃える炎は、熱い涙に変わって私の頬を伝う。かくなる恵みをもてたことの喜びの涙だ。

 私たちが東京で出会い結婚してから20年以上が経ち、田舎に住んで15年が過ぎた。夫との出会いと私の最初の本の出版が同時。田舎への移住と夫の写真家としての出発が同時。
 以来、カメラというもう一つの目を持つ夫と、心の中にノートを開いている私は、コラボレーションの仕事をよくするようになった。共著も10冊になろうとしている。
 そんな幸せな歳月を、この永遠の太陽と共に、周囲の人々の愛情に包まれて送っていることへの感謝の思いがどっと噴き出したのだ。
 蒼空に雲が流れ、風が下の土手から水仙の香りを運んできた。この新居で初めてのお正月を迎える私たちを、先住の野水仙の花々が歓迎してくれているのだ。

「この花も混ぜなさいよぉ」。新年を飾るために道で花を摘んでいたら、農家の主婦が畑で栽培した花を差し出した。新住民を歓迎してくれるのは花ばかりではなかった。今年の一年が誰にとってもほんとうに平安な日々であるよう祈ろう。

 ソローヒルにも今年はすでに霜が降りた。他の地方では雪が降っている。冬に寒いのは当たり前。だが寒波到来の報に何か不安があるのは、世の中に不安材料がたくさんあるからだ。中でもいたいけな子供たちの被害には腹が立つのを通り越して絶望感に襲われる。未来を託すこどもたちをこのような状況においている私たち大人、社会、反省しても仕切れない。